yamaguchiy011203 「現代政治の理論と実際」レポート
「アフガニスタンの対立構造の要因」 a013338 山口由紀
11月アメリカ同時多発テロが起こってから、突然アフガニスタンと言う国がクローズアップされることとなった。今まで、あまり人の注目をあびることのなかったこのアフガニスタンと言う国が、一体どんな国なのか知らない人がほとんどだったと思う。しかし,この悲惨な事件によってこの国が注目を集めることになり、たくさんの人々が今まで知らなかった世界の問題に目を向けるようになったと思う。それは、例えば難民の問題であったり、もしくは貧困と言う問題であったり、アメリカの中東に対する干渉の問題であったり、もしくは宗教と言う面からの見た問題であったり、女性の人権の問題であったりと人によって、関心事はさまざまだと思う。しかし、みな何かしら今もまだ解決されない世界の問題に対して、あらためて考えさせられることとなったと思う。
そんなたくさんの人々がいろいろなことについて考えさせられることとなった、事件の複雑な要因を考えるうえで、中東の歴史的なの対立構造を考えてみたい。まず、事件の犯人とされる、ラディン氏が反米感情を持った理由として、イスラエルの問題がある。アメリカは、イスラエルをずっと支持してきた。そのことによって、その他の周りのアラブ諸国との対立が生まれていった。そして、またアラブ諸国は、アメリカとソ連の「冷戦」に巻き込まれていく。アメリカは石油の関係から原油国を支持し、ソ連は社会主義の国を支持していった。そしてまた、ここに対立が生まれた。また、アラブ諸国内部でもイランとイラクの国境をめぐる対立が起っていった。しかし、1990年に冷戦は終結し、改善されるかと思われるがそうでもなかった。イラクがクウェートに侵略し、これをきっかけにアメリカなどの多国籍軍との間で湾岸戦争がおこった。その時、イラクは聖戦を主張した。そのことによって、湾岸戦争でのアメリカの行動はイスラム組織に悪い印象を与えた。そして反米感情につながっていった。
このように見ていくと、いかに中東の問題が複雑かが分かる。いかに国や組織が自分たちの利害を考えて行動していったかが見うけられる。そして、このことを調べていって感じたことは、本当に「敵の敵は味方なのか」と言うことだ。自分の敵の敵にあたるから支持しているというのが多いと思う。アメリカがソ連進行の時アフガニスタンの手助けしたのも、「敵の敵」であるからだし、それに今回の北部同盟の援助も敵の敵だからである。しかし、本当にこういう手助けの仕方でいいのだろうか?自分の国や組織の有利となる方を手助けするというのでいいのだろうか。アフガニスタンの一般の市民は、そんなことは望んでいないと思う。ただ周りの国や組織の対立に巻き込まれた被害者なのだ。どの国も組織もアフガニスタンの一般の市民のために戦ったのではない。どの国も組織もアフガニスタンの人々を考えていなかったのだ。ただ考えたのは自分の敵を衰えさせるために敵の敵を支持して、武器を提供することだけだった。しかし、どんなに自分の利益を考えず、アフガニスタンの人々のことを考えたほうがいいと、ここで道徳的なことを訴えても解決にはならない。今や、タリバンの力は衰え、北部同盟が首都のカブールを制圧した。そして、新政権作りの会議がボンで開かれている。問題は、これからこの複雑な対立構造を持ったアフガニスタンをどうしていくかなのだ。そこで、今度はこれからのアフガニスタンに影響力をもっていくと思われる北部同盟について詳しく見ていきたい。
北部同盟はタリバンに対抗すべく作られた組織で、3つの党派から成り立っている。イスラム協会とイスラム統一党とアフガニスタン民族イスラム運動の3つである。
北部連合を構成する主要各派は下記の通りである。
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北部連合(統一戦線) を構成する党派 |
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組織名 |
指導者 |
主要民族 |
根拠地 |
主な支援国 |
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イスラム協会(通称マスード派) |
グルバディン・ラバニ |
タジク人 |
ファイザバード |
タジキスタン、イラン、ロシア、インド |
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イスラム統一党 |
ハリリ・ハリム |
ハザラ人 |
アフガン中央高地・バーミアン地方 |
イラン |
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NIMA |
アブダル・ラシッド・ドスタム |
ウズベク人(スンニ派) |
アフガン北部・マザリシャリフ |
ウズベキスタン |
http://watan-jp.hoops.ne.jp/Special/civil_war1.htm「タリバンの首都掌握以降の内戦状況」
ここで重要だと思われるのは、それぞれの主要民族、そして主な支援国がばらばらであるということだ。そして、この3つの党派は過去に同盟、敵対を繰り返していたことも重要だと思われる。今は、カブールを制圧しタリバンがいなくなり、人々は自由を得たかのように思われるが、本当に人々に平和がやってくるのだろうか。今まで、単に反タリバンとして同盟を結んできた党派が、タリバンがなくなった後本当にうまくやっていけるのだろうか。また内戦が起こる様なことはないのか心配される。また、この3つの主要な党の中にアフガニスタンの主要な民族であるパシュトゥーン人で構成される党がないのも、問題だと思う。もし、それぞれの党が自分の民族や支援国に有利に事を運ぼうとすれば、問題が生まれるのではないだろうか。
また、議会にあたる暫定評議会はザヒルシャー元国王がトップになる可能性が強いとの話もある。これからいったいアフガニスタンはどんな国になっていくのか、目を離せない状況だと思う。そして、この会議においても、どの党派も自分の影響力を強めようとするのではなく、本当に国民のことを考えてほしいと思う。しかし、なかなか実際はそうはいかないのが難しいところである。先ほど、道徳的なことをここで考えても解決には至らないと書いたが、やはり根本的にはその道徳的な心が根本では大事だと思う。もちろん、国レベルの政治的なことが絡んでいて、そのことも今回の事件の理由だと思う。しかし、今回の事件にかかわっているとされる、タリバンと言う組織にしても、みなイスラム教を偏った考え方から見た学校を出た人々がほとんどだと思う。もしも、その人々がきちんとした教育を受けていたとしたら、状況は変わっていたかもしれない。もちろん、宗教的な考え方や民族同士の違いなどから、対立的な考えが生じてしまうのは、しょうがないことかもしれない。しかし、そんな自分たちの利害だけを考えるような党派や組織に対抗する力をもったものがあってもいいと思う。そして、そのことがアフガニスタンの人々にとって悪いことになると知っているにもかかわらず、武器を提供してきた外国などは実はタリバンなどよりももっと悪いのではないかと言う考えすら浮かぶ。彼らは、別に宗教の学校を出たわけではない。きちんとした教育を受けてきたものとして、実はアフガニスタンの人々にとってどうすべきなのか、何か策を提供すべきだったのだと思う。武器を提供するのではなく。今やアフガニスタンには教育を受けていない人々がたくさんいるといわれている。その人々のためにほかの人々がができることとはいったい何だろうか。彼らが実際に自分たちの国のことを考え、自分たちで国を作り上げていくのには、きっとまだまだ時間がかかると思う。
そして、今回事件を調べるにおいてインターネットを大変に活用した。そのことについても触れておきたい。中東の対立は地上での活動だけでなく、ネット上での活動にも及んでいる。2000年11月1日には、パキスタンの複数のクラッカーがアメリカの親イスラエル圧力団体のウェッブサイトを攻撃した。また、イスラエル人対パレスチナ/アラブ人のネット上の対立も10月以来非常に活発化しているとのことだ。そこで、改めて感じたことはネットによりいい意味でも悪い意味でも国境などの地理的条件を超えて、人のまとまりが作られていくということだ。そして、このネット上の対立は取り締まることは難しいと思われるが、解決に向けて地上で起こっている対立と同じように、根本的な対立構造を考えることが重要なのだと思う。